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東京地方裁判所 昭和47年(むのイ)480号 決定 1972年6月24日

被疑者 ○○○○

右の者に対する兇器準備集合・公務執行妨害・傷害・現住建造物放火被疑事件について、昭和四七年六月二三日東京地方検察庁検察官平保三がなした接見に関する拒否処分に対し、同日弁護人となろうとする弁護士渡辺泰彦からその取消を求める準抗告の申立があつたので、当裁判所は次のように決定する。

主文

本件準抗告の申立を棄却する。

理由

一本件準抗告の申立趣旨は、「東京地方検察庁検察官平保三が昭和四七年六月二三日被疑者と申立人の接見を禁止し拒否した処分を取消す。同検察官は申立人に対しその接見の申立があり次第直ちに被疑者に対する接見を許さなければならない」との裁判を求めるというにあり、申立理由は、準抗告申立書に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

二当裁判所の事実取調べの結果によると、被疑者は昭和四七年六月七日頭書の被疑事実により勾留され、現在警視庁代用監獄に留置されている者であるが、申立人は被疑者の依頼により弁護人となろうとする者として、同月二二日午後三時すぎころ被疑者と接見するため、その指定を受けるべく東京地方検察庁の係検察官平保三のもとに赴き、これから直ちに接見したいと申し入れたところ、同検察官は司法警察員の被疑者に対する取調べ状況を調査した上、現在警察官において取調中であるため今は差しつかえるが明二三日午後一二時ころなら接見させることができる旨回答し、申立人もこれを了承した。そこで、同検察官は、その場で申立人に接見のための具体的指定書を交付すべく、指定書に日時・場所及び時間を記載しはじめたところ、申立人は「私は具体的指定書は受取れません。明日昼から面会に行きます。」と述べ、同検察官が「今、指定書を書いているから待つて欲しい。まだ日時・場所等の指定が終つていないから。」と言つて引きとめたのに耳を藉さず、指定書を受領しないで同所を退去した。申立人は、翌二三日午後一二時すぎころ、警視庁に出頭して被疑者との接見を要求したが、同庁係官から検察庁に指定書を取りに行くように言われ、結局接見しないで帰つたこと、以上の事実が認められる。

三右認定の事実に徴すると、平検察官は申立人と面接してその希望を聴取した上捜査上の都合も参酌し、申立人納得のもとに六月二三日午後一二時ころから接見を許すことにし(申立人主張のように、申立人と検察官との間に、具体的な接見に関する日時・場所及び時間について約束が成立したことは認められない。)直ちに申立人に交付する指定書をその面前で記載しはじめたのに、その最中、申立人は特段の理由を示すことなく、指定書は受領できないと称し勝手に退室したのであるから、同検察官において申立人の接見を禁止したり拒否した事実は全くなかつたという他ないばかりか、切角申立人に再度の手間をかけさせないため、その場で指定書作成の労をとる検察官の好意を無視するような申立人の態度に鑑みると、むしろ申立人は自から進んで同日の接見の申立を撤回したか放棄したと解すべきではなかろうかとも考えられなくはないのである。

なお申立人が警視庁において被疑者と接見できなかつたのは、検察官の具体的指定書を持参しなかつたためであつて、接見を拒否されたが故ではないことは明らかであり、また申立人が主張する刑訴法第三九条第三項は憲法第三四条に違反するとの見解には賛同することができない。

してみると、平検察官に接見の禁止もしくは拒否処分があつたことを前提とする申立人の主張は、その余の点について判断をするまでもなく失当であるから、本件準抗告の申立は理由がないものとして棄却することとし、刑訴法第四三二条、第四二六条第一項により主文のとおり決定する。 (中野武男)

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